パターソン PATERSON
ドッカーンとビルが大爆発したりズダダダと銃が乱射されたり熱烈なラブロマンスが繰り広げられたり、といったセンセーショナルだったり娯楽度の高いシーンは一切ありません。
それが、良い。
それで、良いんです。
「何が起こるんや?」と勘繰りながら観ていましたが、だんだんと映画のペースに引き込まれていました。
そしてふと我に返って、なるほど、これで良いんやな、と気付きました。
言葉。
詩、アート、頭の中の世界。
音楽。
マフィン。
夕食に出て来た口に合わないチーズと芽キャベツのパイ。
愛犬のブルドッグを連れた夜の散歩、途中で立ち寄るバーでの会話。
愛する妻、愛する夫。
インドの叔父から姪への贈り物をせがまれる同僚。
同じく詩を愛する少女と日本人。
登場するすべてが、とても美しく、あたたかく、愛おしい。
日常であり、ルーティンだったり楽しみな予定だったり、たまに想定外のアクシデントが起こったりもします。
公式サイトにジム・ジャームッシュ監督のコメントが載っています。
『本作品は、ただ過ぎ去っていくのを眺める映画である。』
ルーティンもアクシデントも、まさにバスの窓から流れる景色を眺めるような目線で描かれます。
静かで、穏やかで、淡々とした目線。
とても瞑想的。
なんだ け ど !
ただそれで終わらないのがジャームッシュ監督。
お得意のエキゾチックな愛すべきキャラクターや、監督にとってスペシャルな存在のイギー・ポップ、古いモノクロ映画をチョイと絡めてくるものだからウハウハ萌え萌えしてしまうのですよ!
ペットのブルドッグも劇的にかわいい!
インド系の同僚は「調子は最悪だ」と家族のことお金のことなどボヤきまくり、そのくせ「でもこれが俺の負うべきカルマだ」とやっぱりインディアな受容っぷりだし、最後の最後になってようやくふらりと登場してきた永瀬正敏さん演じる謎の日本人の詩人は「日本語で詩を書いてる。翻訳はしない。翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びているようなものだ」と名言を残して立ち去るし、もうなんだこの萌え萌えは!
映画館からの帰り道、私の外側の世界はとてもみずみずしくて愛おしかった。
この夏の暑さにバテて疲れ気味だったり、この数日考え事にふけっていたり、バイオリズム的に乱れやすい時期だったり…ソワソワざわざわしていたところにスーッと染み込んで満ちてくる癒しでした。
やっぱり日常を大切に生きて、丁寧に感じていこう。
インド帰国後に何度も思って来たことのはずなのに、すぐ忘れちゃうから何回も何回も思い出して、そのたびに新たな気付きとなり積み重ねていく。
それが良い、きっとそれで良い。
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